この資料を全部読んで、要点をまとめて、報告書の形にしておいてください。人に頼むなら、この一言で用件が済みます。

ところが、質問に回答を返す形の道具には、この頼み方ができませんでした。途中の手順が抜け落ちてしまうからです。

Claude Coworkは、その途中の手順まで含めて任せることを目的とした機能です。

この記事では、まず何をする機能なのかを順を追って説明し、その後で仕組みと安全な使い方を扱います。

この記事でわかること

  • Claude Coworkが何をする機能なのか
  • 通常のチャットやClaude Codeとの違い
  • どこで処理が行われ、ファイルがどこに置かれるのか
  • 承認の三つの方式と、危険を避けるための境界の引き方
  • 依頼文の書き方と、受け取る成果物の確認方法

1. Claude Coworkの基本

この章は、はじめてこの機能に触れる人向けです。専門的な用語はできるだけ使わず、頼み方がどう変わるのかから順に説明します。

頼み方が変わる

通常のチャットでは、質問を入力すると回答が返ってきます。

たとえば、文章を貼り付けて「要約してください」と書くと、要約文が返ってきます。ここでの作業は、入力に対する一回の回答です。

Claude Coworkでは、完成させたい結果を伝えます。そこに至るまでの手順は、Claudeの側が考えて進めます。

まず、いちばん単純な形で流れを示します。

図 1

要点は、何度も往復する部分を、人が一回ずつ指示しなくてよい、という点です。

Anthropicは、Coworkについて、結果を伝えてその場を離れ、仕上がった仕事を受け取りに戻れる機能だと説明しています。

通常のチャットとの違い

同じ依頼を、通常のチャットとCoworkのそれぞれに出したときの違いを並べます。

項目 通常のチャット Claude Cowork
伝えること 質問や指示 完成させたい結果と条件
手順を決める人 利用者 Claude。利用者は方針を確認する
進み方 一回の入力に一回の応答 目的に届くまで手順を続ける
扱う対象 会話に貼り付けた内容や添付ファイル 接続を許可したフォルダー、外部サービス、画面上のアプリ
受け取る物 回答の文章 文書、表計算、資料などのファイル
人の役割 指示と確認 目的の提示、許可の判断、成果物の確認

Coworkが作った物をそのまま使ってよい、という意味ではありません。数値や日付を含む文書、外部に出す文章は、人が中身を確認する必要があります。この点は第5章で改めて扱います。

どんな作業を任せられるのか

具体例を挙げます。いずれも、複数の手順を含む点が共通しています。

資料を読んで整理する

会議の議事録が五つ、製品の説明資料が三つ、問い合わせの記録が一つあるとします。

これらをまとめて渡し、決まったこと、決まっていないこと、担当者が必要な作業、という三つの区分に整理させることができます。人がやる場合は、九つのファイルを順番に開いて読み、内容を突き合わせる作業になります。

表計算を作る

数値の一覧を渡して、集計の表を作らせることができます。Anthropicの説明では、Coworkは計算式が入った状態の表計算ファイルを作成できます。値だけが並んだ表ではなく、後から数値を差し替えても計算し直される形です。

ファイルの状態を調べる

フォルダーの中を見て、種類ごとに分類したり、名前と中身が合っていないファイルを一覧にしたりできます。

定期的に実行する

Anthropicは、Coworkの作業を定期的に実行させられると説明しています。毎週決まった曜日に、決まった形式の報告をまとめる、といった使い方です。

途中で許可を求められる

Coworkは、ファイルを読む、Webページを見る、アプリを操作するといった、実際に影響が出る操作を行います。そのため、操作の前に利用者へ許可を求める仕組みがあります。

流れを、登場するものを分けて示します。

図 2

はじめて使うときは、この確認を省略しないでください。何を対象にしようとしているのかが、確認の画面に表示されます。

ここまでが基本です。次の章からは、仕組みの側から説明します。

2. Claude Codeとの関係

共通している考え方

Claude Codeは、ソフトウェア開発を対象とした機能です。目的を伝えると、関連するファイルを調べ、コードを変更し、必要に応じてテストを実行します。

Anthropicの説明では、Claude Coworkは、このClaude Codeで使われている、複数の手順を自分で進める仕組みを、開発以外の知識作業に広げたものです。Coworkを使うために端末を操作する必要はありません。

図 3

対象と道具の違い

項目 Claude Code Claude Cowork
主な対象 ソースコードと開発環境 文書、資料、表計算、調査
主な操作 ファイル編集、コマンド実行、テスト ファイルの読み書き、Web閲覧、アプリ操作、成果物の作成
典型的な依頼 機能追加、不具合修正、テスト作成 報告書の作成、資料の整理、調査結果の文書化
利用者に必要な知識 開発環境とコードの知識 目的と確認基準を言葉にする力
入口 端末やエディター Claudeのアプリの入力欄

この二つは、どちらが上位という関係ではありません。対象とする仕事が違います。

接続できる外部サービス

Anthropicの製品ページでは、接続先としてMicrosoft 365、Google Drive、Slack、Amplitudeが挙げられています。

つまり、手元のファイルだけでなく、業務で使っている保管場所や連絡手段の側にある情報も対象にできます。この範囲の広さが、次章以降で扱う権限の話につながります。

3. 動作する場所とデータの流れ

二つの実行方式

Anthropicのアーキテクチャの説明によると、Coworkのセッションには二つの実行方式があります。

図 4

クラウドセッションが既定の方式で、Anthropicはこれをベータ提供として扱っています。

クラウドセッションの隔離

Anthropicは、クラウドセッションについて次の性質を挙げています。

  • セッションごとに専用の隔離環境が作られ、終了時に破棄される。
  • 隔離環境どうし、および組織どうしで状態を共有しない。
  • 隔離環境から、私設の内部アドレスや、クラウドの管理情報を持つアドレスへは到達できない。
  • 隔離環境から出るすべての通信は、隔離環境の側から設定を変更できない中継点を必ず通る。
  • 認証に使う情報は、そのセッション専用で、数時間で期限が切れる。
  • 保存される記録は、組織とアカウントの単位で区切られる。

端末上のファイルやアプリに触る操作は、デスクトップアプリを通じてのみ行われ、その要求は利用者の権限設定に照らして確認されます。

ローカルセッションの構成

デスクトップで動くローカルセッションでは、手順の判断そのものが利用者の端末上で動きます。

処理の実行は、端末の基本ソフトから切り離された専用の仮想機械の中で行われます。この仮想機械には、外部への通信の制限、システム呼び出しの制限、セッションごとの利用者の分離がかけられています。

画面ごとにできることが違う

Coworkは、Pro、Max、Team、Enterpriseの各プランで利用できます。ただし、どの画面から使うかによって、できることが変わります。

画面 主な範囲
デスクトップアプリ すべての機能。作業中の成果物の表示、手元のファイルの読み書き、ブラウザーの操作、画面操作
Web版 作業の開始、経過の確認、接続先や手順集の利用、定期実行の確認
モバイル版 Web版と同じ範囲
Claude in Chromeの側面パネル 選択の操作なしにCoworkを開始できる

次の操作には、端末上でデスクトップアプリが動いている必要があります。

  • 接続したフォルダー内のファイルの読み書き。
  • 端末側の接続先や拡張機能の利用。
  • Claude in Chromeによるブラウザーの操作。
  • 画面上のアプリの操作。

Web版とモバイル版は、Pro、Max、Teamにおいてベータ提供です。Enterpriseでは管理者が有効にした場合に利用できます。Claude in Chromeの側面パネルは、MaxとTeamで利用でき、Proへは順次提供されています。

セッションは端末をまたぐ

クラウドセッションは、アカウントに紐づいて端末をまたぎます。同じセッションとファイルが、デスクトップ、Web版、モバイル版から見えます。ある端末で始めた作業を、別の端末で確認できます。

ただし、手元のファイルへの読み書きは、そのファイルがある端末でデスクトップアプリが開いているあいだだけ機能します。外出先のモバイル版から作業を続けるとき、自宅や職場の端末上のファイルに触れるかどうかは、その端末の状態で決まります。

セッションの状態を、遷移の形で示します。

図 5

4. 権限と、境界の引き方

三つの承認方式

Anthropicの安全に関する案内では、操作の承認に三つの方式があります。

  • 手動で承認する。操作ごとに利用者の確認を必要とします。
  • 自動で承認する。Claudeが実行前に操作の安全性を判定します。
  • 承認を省略する。操作の確認を行いません。危険が最も大きい設定です。

どの方式であっても、ファイルを完全に削除する前には必ず確認が入ります。

判断の流れを示します。

図 6

外部の文章に紛れ込んだ指示

Anthropicが主な危険として挙げているのは、Claudeが読み込む外部の内容に、悪意のある指示が埋め込まれている場合です。英語ではprompt injectionと呼ばれます。

依頼を果たすために資料やWebページを読んだとき、その中に書かれた文が、利用者からの指示のように振る舞おうとする、という形です。

図 7

この形になるため、承認の画面に出てくる操作が、自分の依頼と対応しているかどうかを見ることに意味があります。読ませる資料の出どころが分からない場合は、承認を省略する設定にしないでください。

Anthropicは、危険として次のものも挙げています。

  • 意図しないファイルの削除。
  • 取り扱いに注意が必要な情報の露出。
  • 許可していないアプリ間での情報の受け渡し。

接続する範囲を先に決める

Anthropicの案内では、ファイル一式へ広く接続を許すのではなく、作業専用のフォルダーを作って、そこだけを接続することが勧められています。

接続を避ける対象として挙げられているのは、財務に関する文書、認証に使う情報、個人の記録です。

図 8

ブラウザーの操作についても、同様の考え方が示されています。Claude in Chromeを通じて作業させるサイト、特に自分が利用者として認証を済ませているサイトについては、対象を意識して選ぶよう案内されています。医療、金融、交際に関するアプリは、画面操作の対象から外すことが勧められています。

作業中と作業後に見ること

作業中は、次の点を見ます。

  • 依頼に出てこなかったファイルを開こうとしていないか。
  • 依頼に出てこなかったサイトへ接続しようとしていないか。
  • 作業の範囲が、頼んだ内容を越えて広がっていないか。

不審な動きがあれば、その場で作業を止めます。

作業後は、定期実行させている場合も含めて、出力を定期的に確認します。Anthropicは、Claudeが行った操作の責任は利用者にあるとしています。

5. 依頼文の設計と、成果物の確認

依頼文に含める四つの要素

結果を確認しやすくするには、次の四つを分けて書きます。

  • 目的。何を完成させたいか。
  • 対象。どのファイル、資料、接続先を使うか。
  • 制約。してはいけないことは何か。
  • 出力。どの形式で受け取りたいか。

制約の欄が、承認の判断を軽くします。書いていない制約は、承認の画面で一件ずつ判断することになるためです。

出力の欄は、確認の手間を決めます。項目の順序と、各項目に添えるものまで指定しておくと、受け取った側は原資料と突き合わせる箇所をすぐ見つけられます。

以下に三つの例を示します。いずれも依頼文の側だけを示し、成果物の見本は載せていません。作業の内容によって出力は変わるためです。

例1 資料を読んで論点を整理する

目的:
接続したフォルダーの会議資料をもとに、社内共有用の整理表を作成する。

対象:
- 会議の議事録
- 製品の説明資料
- 問い合わせの記録

制約:
- 資料に書かれていない内容を、事実として書かない
- 資料どうしで食い違う箇所は、両方を併記する
- 判断が必要な箇所には、要確認と書く
- 元のファイルは変更しない
- 外部への送信は行わない

出力:
- Markdown形式のファイルを1つ
- 見出しの順は、概要、決定事項、未決定事項、担当作業、参照ファイル一覧
- 各項目に、根拠となったファイル名を添える

この依頼文で重要なのは、最後の二行です。

要確認という印を出させることで、Claudeが判断に迷った箇所が、人が見るべき箇所として表に出ます。印がないと、確信のある記述と迷った記述が同じ見た目で並びます。

根拠となったファイル名を添えさせることで、確認したい記述だけを元の資料まで遡れます。これがないと、疑わしい一行のために全ての資料を読み直すことになり、任せた意味が薄れます。

例2 ファイルの状態を調べる

削除や移動を伴う作業は、一度に頼まないでください。まず一覧だけを作らせます。

目的:
接続したフォルダー内の文書の状態を把握する。

対象:
- 接続したフォルダーの直下と、その下の階層すべて

制約:
- ファイルの移動、名前の変更、削除を実行しない
- 中身を書き換えない
- 判定の根拠を必ず添える

出力:
- Markdownの表を3つ
- 1つ目は種類ごとの件数
- 2つ目は、名前と中身が対応していない可能性があるファイル
- 3つ目は、重複している可能性があるファイル

制約の一行目と二行目で、この依頼の範囲を読み取りだけに限定しています。第4章のとおり、ファイルを完全に削除する前にはどの承認方式でも確認が入りますが、移動や名前の変更はその対象ではありません。依頼文の側で外しておきます。

出力の表を人が確認したうえで、次の依頼で移動や削除を指示します。手順を二つに分けると、取り消しの必要な操作が減ります。

例3 表計算を作る

目的:
売上の一覧から、月別の集計表を作成する。

対象:
- 接続したフォルダーの 売上明細.csv

制約:
- 元のファイルを変更せず、新しいファイルとして保存する
- 集計は数式で行い、計算済みの値を直接書き込まない
- 元データにない月を勝手に補わない

出力:
- 表計算のファイルを1つ
- 列は、月、件数、金額合計、前月比
- 前月比は、最初の月では空欄にする

制約の二行目が、後から数値を差し替えられる表になるかどうかを決めます。値だけが書き込まれた表は、元データが変わったときに作り直しになります。

受け取った表で確認するのは、次の二点です。

  • 集計の対象範囲が、元データの行数と一致しているか。
  • 期間の区切りが、月の境目とずれていないか。

三行目の制約は、元データに存在しない月が表に現れることを防ぐためのものです。連続した期間として見せるために欠けた月を補うと、集計表としては誤りになります。

受け取った後に確認する箇所

成果物のうち、原資料と突き合わせる必要があるのは次の項目です。

  • 数値。
  • 日付。
  • 固有の名称。
  • 契約に関する条件。
  • 法律や規則に関する説明。
  • 外部に提出する文章。

これらを含まない部分については、構成と抜けの有無を見れば足ります。

確認の順序は、まず出力の形式が依頼文の指定どおりかを見て、次に上の項目を原資料と照合する形になります。形式が指定どおりでない場合は、依頼の解釈がずれている可能性があるため、中身を読む前に依頼文を見直してください。

6. まとめ

Claude Coworkは、Claude Codeで使われている、目的から手順を組み立てて進める仕組みを、文書作成、資料整理、調査、表計算といった知識作業に広げた機能です。

利用者が伝えるのは、完成させたい結果と条件です。途中の手順はClaudeが決め、影響のある操作の前に許可を求めます。

処理はAnthropicのサーバー上の隔離環境で行われる方式が既定で、デスクトップでは端末上で動かす方式も選べます。手元のファイルやブラウザーや画面の操作には、デスクトップアプリが動いていることが必要です。

安全に使ううえで中心になるのは、接続する範囲を先に決めること、承認の画面に出る操作が自分の依頼と対応しているかを見ること、成果物のうち数値や日付を原資料と突き合わせることの三点です。

はじめて使うときは、調べて一覧にする、草案を作る、変更せずに候補だけ示す、といった取り消しやすい作業から始めてください。作業を二段階に分け、一段階目の結果を人が確認してから二段階目を頼む形が、最も失敗の少ない進め方です。

7. 出典